f丸の生態・デイリー

よく本を読んだり、たらたらかんがえごとをしている人のブログです。

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サイゴン・タンゴ・カフェ 中山可穂
評価:
中山 可穂
角川書店
¥ 1,785
(2008-02)
恋愛の一番美しくて残酷な部分だけを集めて、結晶にして、磨いだような、
ページが少なくなっていくのがもったいなく感じるような素敵な短編集でした。

四年前にでた短編集「弱法師」にも雰囲気が似た、恋愛小説の中短編集。

中山可穂の小説の魅力は幻想的な雰囲気を携えたそのピュアさ、そして
それに裏打ちされた荒々しさだと思っていました。

今までの小説でもその傾向は如実に現れていて、恋愛にも仕事にも不器用な
主人公(たいていは芸術家でレズビアン)が激しく求め合って、傷つけあいながら
恋を進めて、時にはアンダーグラウンドな世界(ドラッグなど)にも手を出しながら、
たいていの場合は悲恋で恋が終わるというストーリーでした。
それはそれで、また激しくもなお美しいものでしたが。

そこで、今回の小説です。今回の「サイゴン・タンゴ・カフェ」を読んで、一番に
感じたことは作者中山可穂が主人公と自分を遠ざけて客観的に書こうと
していることです。
一人称を避けて、恋を遠くから見つめるように。まどろこしい方法をあえて
使って、決定的な衝突だけを避けていくように。

特にそれを感じたものは表題作の「サイゴン・タンゴ・カフェ」です。
作者中山可穂に生き写しのような(会ったこともないけれども・・)主人公穂波。
作品中の穂波が惚れた女のために、自分を抑えて、一般受けするような
作品を描くところなんかは、何となくですが、本当に作者もこんなふうに
考えているのかなと、そのままシンクロせずにはいられません。

それでも、どこまでも冷静に、どこまでも客観的に、今までの心の傷、
抱えてきた事、いつまでもは一緒にいられない未来への不安、それらを
全部、包括しながらも二人が織り成す引力に引きずりこまれずにはいられない。

思えば、今までの中山作品は「故意が始まって終わるまで」を描いたものが
多かったように思います。
けれども、この短編集では「恋が始まって、終わる。そして、それから」を
描いているのだと思うのです。
恋が終わって、痛手を負っても、二人ともそれで終わりにはせずに、そこから
教訓を学んで、もしも許されるのならば、もう一度二人をリスタートさせる。

今までの生きるか死ぬかみたいな極端な話よりも、やはりこういう希望のもてる
話のほうが個人的にも好きです。
ケッヘル 中山可穂
ケッヘル〈上〉
ケッヘル〈上〉
中山 可穂
中山可穂です。どこまでも中山可穂です。
過剰に華美な表現描写、強引な展開、それに内包された繊細で壊れそうな
感情。
どこまでもオールオアナッシングで、いつまでも伸るか反るか。
そんな効率の悪い世界観が最後まで、灰汁が強い登場人物の勢いで
続いていきます。

ただ、今作は前作の「弱法師」に比べて、ミステリ色がでてしまい、
「弱法師」は報われない愛情ばかりを丁寧に描写したのに対して、
別にどうでもいいかなと思ってしまう部分もけっこうありました。

だって、ミステリと考えて読むのならば、中山可穂は確実に登場人物の
出し方や物語の構成がなってないでしょう。もっと早く殺人を起こして、
もっと早く回りに殺人の不穏なムードを出さなければ。
登場人物も絞ることができたでしょうに。

あと、たまに出てくるコントみたいな設定。逆に面白かったけれども、
なんだよ、こんな高校ないだろう。
夕子ちゃんの近道 長嶋有
夕子ちゃんの近道
夕子ちゃんの近道

長嶋有 新作。
しかし、まぁ。話が薄い。淡いです。キャラクターも情景も。
自分は長嶋有のこういったぼんやーりとした話の雰囲気が好きなほう
なんですが、それにしても淡白な味わいです。

薄味のせいにしてはいけないのですが、そんな中でも感じたことは
「目立たないような人間の中にも、その人なりのこだわりがあって
ほのぼのと生きているんだ」ということなのかなとも思いました。

一番それが如実に現れているのは夕子と朝子という双子の存在だと
思います。

けれども長嶋有はそういう淡い光を用いたシーンを描くのが本当に
お上手ですね。
底冷えする寒い真冬の昼下がりや夜明け前のひかりに囲まれるシーン。
吉田修一なんかにもそういうシーンがゆくあるような気がしますが、
淡い光のなかでものがちゃんと見えないシーンが大変に印象的で
「逢う魔が時」みたいなものをつくりだしているのかなとも感じました。
愚行録 貫井徳郎
愚行録
愚行録

面白かったです!「グロテスク」と比較されがちで、大変に
期待していた本書でしたが、物語に対する興味がまったく下がる事
なく、ドキドキが続いたまま最後まで読みきることが出来ました。

完全に語り口調で進行する物語が、すごく主観的な視点で人物の描写
がなされて、そこがまた被害者への独善的なイメージを膨らませること
ができますね。言い方はともかく内容で。

内容・形式・そのあたりには不満はほとんどないのですが、あると
すれば、ページ数でしょうか。
このオチじゃあ旦那のほうの昔にも語られたのが、ダミーとしての
意味しかなく、完全に死んでしまいますし。残りページ数から逆算して、
これじゃあ完全なカタルシスがあるオチが待っていないことが分かって
しまいますもん。

「あ、あと15ページしかない〜ということは、なんか中途半端なん
やね〜」って、なりますもん。

内容も「大学とか会社とか、人が集まるところは怖いところじゃあ」
でゾクゾクして、面白かったですし。
犯人に対してもあまり文句はないです。物語の描かれていない展開(いつ
の間にか殺されたとか)にも対応できました。

しかし、この妹はともかく、お兄ちゃんって誰よう〜?
最初はこの兄妹は被害者の兄妹かと思った。

どうで死ぬ身の一踊り 西村 賢太
どうで死ぬ身の一踊り
どうで死ぬ身の一踊り
西村 賢太
さあ、問題作です。西村賢太です。ついに読了いたしました。
町田康的文体なのかなと思っていたら、そういうわけでもなかった。

話しは少しずれますが、自分は都はるみ・岡千秋の「浪花恋しぐれ」を
聴くたびに、いつも不思議に思っていました。

それは「お酒飲まなきゃいい人なのに」というフレーズです。

あの歌詞を読んでいると、岡千秋(勝手に同一視します)は、定職につかず
、女の金で酒を買い、その酒を飲んでは暴力をふるいます。

ニートでヒモで甲斐性なしでDVです。でも、お酒飲まなきゃいい人
なのです。

さらにどう考えてもお酒をやめる気配がありません。ということはそれに
さらにアル中まで、加算されそうです。

ニート、ヒモ、甲斐性なし、DVでアル中。それでもお酒飲まなきゃいい人、けれどもどう考えてもお酒をやめそうな気配はない。ということは、
すごく悪い人だと思うのです。

あれは都はるみ(また勝手に同一視している)がかなりの懐が広い
女だからこそ、岡千秋を養えるのです。ニート、ヒモ、甲斐性なし、
DV、アル中、普通ならばどれか一つでも持ち合わせていたら「ダメ男」
の烙印は免れません。そんな五重苦の男を養える女が普通のおばさん
にはなかなか戻れるはずがないというものでしょうね。

この「どうで死ぬ身の一踊り」は見事にそれを地で行く小説でした。
内容に関しての説明はこの一言で十分だと思いますので
省いておきますが、読めば読むほど「浪花恋しぐれ」的世界は
うらやましくない世界でした。

あれは女側が都はるみだからこそ成立する世界なのですね。
逆に言えばこういうことを続けられる余裕はとても評価すべき
贅沢なのかもしれません。

ものすごく受けコマが狭い世界にこだわる閉ざされた強烈な自意識。
そこを脅かすものへの排除性。たとえ形になったとしても別にうらやまし
くない、非常に効率が悪い頑固なこだわり。

とんでもなく非効率的な身にならない努力を、たいへんに暑苦しく
描いたある意味ゴージャスな小説でした。
まぁ、人好き好きですが同じ芥川賞ノミネート作品でも松井雪子
なんかの低カロリーな小説を鼻であざわらるような孤高な精神が
なんともステキです。

そして、自分、人のことあまり言えないし・・・
100回泣くこと  中村 航
100回泣くこと
100回泣くこと
中村 航
この小説よくないと思います。いや、本当に大変に申し訳がないのですが。

大まかな話の流れは「不治の病とその余波」もので、いわゆる「セカチュー」や「今、あいに行きます」系なのですが、悲しみと恋愛の描写がやや独特で抑え目というくらい。

それはそれでお好きな方もいるのでしょうが、こういう小説だと思っても、「セカチュー」好きな人には主人公のあっさりしすぎた悲しみに消化不良で不満足になるでしょう。

なによりも一番悔やまれるのは中村航という作家の作品の魅力の屋台骨は「主人公を表現するメタファーの巧さ」だと少なくとも自分は思うのです。

「リレキショ」「ぐるぐるまわるすべり台」この二つしか読んだことはないのですが、両者はそんな作品に大きく登場するメタファーがこじゃれた文体とマッチしていて、分かりにくさや伝わりにくさみたいなものを軽減させて魅力へと変えていたと思うのです。

けれどもこの作品ではその要素を感じられるものは「故郷のブックの寿命」と「彼女との約束」くらいで、自分はここからはただのタイムリミットとしての役割しか機能していないように感じました。

かけがえのない二つの死が主人公を大人へと変えたのでしょうか?
うーん、それだけの小説だとは思いたくないなぁ。
悪党たちは千里を走る 貫井 徳郎
悪党たちは千里を走る
悪党たちは千里を走る
貫井 徳郎
貫井徳郎の新作です。
軽いタッチの作品でした。さくさくさくっと読めました。

ハリウッドの誘拐コメディみたいにさくさくさくっと。
おしゃれな展開でさらさらと。

こういう小説もかけるんですね。ダヴィンチですごく苦しまれたとありましたが、たしかに新境地です。

読んでいて「いつもと違う苦手なことを無理してやっているよ。また症候群シリーズにすればいいのに・・・」といういやな印象を抱かないまま読了できました。

なんだか相変わらずなんですが、すごく斜に構えた感想で申し訳ないのですが、新堂冬樹の「忘れ雪」とか読んだ時みたいなそんな違和感を感じなかったのでよかったと思いました。

このまま登場人物をもう少しかっこよくできたら金城一紀的になるでしょう。それはとてもf丸好みで楽しみです♪
沼地のある森を抜けて  梨木 香歩
沼地のある森を抜けて
沼地のある森を抜けて
梨木 香歩
面白かったです。とても。
第二章までの話しの展開は初期の川上弘美のイメージ。
それも少し登場人物が親切にしてくれる。

なんにしろ「ぬか床」というのを出してきたところがすごく好きです。
その特殊で不穏なイメージが目に焼き付けられるように浮かんできました。

なんか卵とか子供が産まれても、毒沼なんかでじゅくじゅくと泡を立てて、ガスとともにけばけばしく毒々しい物体が発生するイメージ。
いろいろなものが産まれてきても、決して警戒の手を休められないイメージ。

これがもし川上弘美の作品だったならば、ぬか床から出てきた人たちは人間としての一生という大きなモチーフでなくて、ある人間の脳というところに還元されてしまうのでしょうね。

大きな種とか生と死みたいな分野までざっくり表現したという感じですが、時に出てくる微生物の説明が細やかでまた生物というものすべてを均質に現しているという壮大なのに細かいところまで手を抜いていない、いい小説を読んだなと思わずにはいられませんでした。
「さくら」 西加奈子
さくら
さくら
西 加奈子

どうなんでしょう。暗い内容ですし、けれども読んでいて思ったよりも暗さは感じませんでした。今作はぜんぜん個人的にはぜんぜんだめだった瀬尾まいこの「幸福な食卓」とも内容的にもかなりかぶるのにこちらは特にアレルギーを感じませんでした。

少し変わった家族と登場人物たち。かなり唐突に起きる悲劇。
ただ違うところというのならば、けっこく直球的な十代の恋と性が描かれているくらいで、それだって普通ならば「中途半端」と感じ得る気もするのに。

いろいろなところで感想を拝見しましたが、やや特殊な比喩表現が賛否両論となっているので、やはりそれなのかな?と思いました。
最後のアル中の描写なんか普通ならばかなり悲惨な感じなのに、個人的にはあまりそういう雰囲気を感じませんでしたし。

それよりもやはり三兄弟の生き様でしょうか。十代なんだから、わざわざ我慢したりするより、「猿みたいに肉体にはまっちゃう」みたいな性欲を抑えきれない姿のほうが絶対に健全でしょう。

あとエピソードでしょうか。個人的にはこうしてやんちゃな子供時代からこうしてそのまま齢を重ねたのよ、みたいな描き方をしたほうが好みなのかもしれません。
フェラーリを最後に重ねてくるところもいいと思います。
「ビネツ」永井するみ
ビネツ―美熱
ビネツ―美熱
永井 するみ
いい小説というものにはやはりテーマが重要だと思います。
正直、自分としてはもうどこかで読んだことがあるテーマ、語りつくされたテーマのものを読んでも、どんなにそれが素晴らしいものでもつまらなくはないが興ざめな気持ちを抱いてしまいます。
すごく当たり前の事ですが、やはりこれも大事なことなのでしょう。

でもこの「ビネツ」は女のプライドをテーマとしながらもベクトルを完璧に仕事のみにしぼって、働く女たちのプライドを美しくなりたいという執念に絡めて、真正面から描ききったと思います。

麻美、真子、結花、京子、セリ、みどり、舞、綾乃、アリシア、トリコ・・・彼女たちの労働意識はややまちまちですし、もちろん彼女たちのなかには100%魅力的とはいいがたい女性もいます。

けれども最終的な結論では妬みや悪意の汚さ、結果だけを求めすぎないことの大切さが説明や直接的な言葉じゃなく、象徴的な目立つ描写で間接的だが効果的に描いており、説教臭くなく、主人公麻美の控えめながらも率直で優しい性格そのままのような小説でした。