f丸の生態・デイリー

よく本を読んだり、たらたらかんがえごとをしている人のブログです。

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真鶴 川上弘美
真鶴
真鶴
川上 弘美

川上弘美の新作です。
相変わらずの穏やかで起伏の少ない展開・文章で独特な世界観を
創り上げております。

柔らかく読みやすそうな文体のわりに、明確にキャラクターを描き出さないの
で、思いのほか読みにくい印象を与えるかもしれませんが、それも川上
作品の魅力のうちでしょう。

小説の内容は失踪した旦那とその妻、娘、母の話ですが、そんなことに
囚われていたらこの小説のおいしいところは見失ってしまうはずです。

個人的な読み方になりますが、この小説は「変わりゆくもの」を表現した
小説だと思います。

自分と同じものから違う存在へと変わっていく、「母と娘」
行方不明者から死者へとかわってしまう「失踪した旦那」

もっとも特徴的なのは文章全体の句読点の多さです。特に「主人公と
娘の百」のシーンで多いようですが、連続する動作や感情を細切れにすること
で、主観の動きを表現していると思いました。

たとえば「東から、西へと、通り、過ぎていく」(本文にこんな文章はない
ですが)と表すことで、どこまでが東でどこまでが西なのか、またそれが人に
よって異なることをやんわりと表していると思うのです。

ひらがなが多い表現もそれの一環だと思います。そうすることで一つの言葉の
受け幅を広げているはずです。

水が湯へと変化していっても、どこまでが水でどこからがお湯なのか
なんて、決められないように、柔らかな文章で「変わりゆくものたち
の境界線の多様さが無限にあること」を表現しきった奥行きのある作品
だと感じました。

大人のための怪奇掌篇  倉橋 由美子
大人のための怪奇掌篇
大人のための怪奇掌篇
倉橋 由美子
倉橋由美子ってまじ面白いですね。

って、そんなことを没後一年近くたった今、さらにこんな短編集の
タイトル改めたバージョンで感激しているのが、なんかずれているような
気もしますが、それはそれ、これはこれということで。

そんなわけでこの短編集。すばらしくレベルが高い、怪奇物語の短編集
でした。こう言ってしまえば、なんの感想にもならないのですが、
こう言うしかない。

「怪奇」であることにそれ以上の意味は特にないようなのに、それ
だけでも充分においしすぎるこの短編集。

昔の作家さんの本も読まなきゃなと思う自分。次はまた「今更ながら」
と思われるでしょうが、渋沢にトライすることにします♪
ゆりかごで眠れ  垣根 涼介
ゆりかごで眠れ
ゆりかごで眠れ
垣根 涼介
垣根涼介新作「ゆりかごで眠れ」です。
「ワイルドソウル」系の骨太で豪快でそれでいて、みっちりとした
描写がなされているエンタメ小説です。

特に今回は妙子とカーサを中心に女性キャラの暗い影が描かれて
いるなと思いました。
いろいろな方の感想も拝読しましたが、垣根涼介は女性キャラの
描写が貧しいとありますが、「ゆりかごで眠れ」ではまったく
感じませんでした。

それよりもやはりこれはジャンルとか好き好きの問題になるのでし
ょうが、いらない描写が多いなぁとは感じました。

そうですね。まとめてみると、今回は「麻薬」と「性描写」が
かなり抑え目でした。「ワイルドソウル」以降の垣根作品は
この二つが妙に目立っていて登場人物が「やりたい」と「吸いたい」
だけの人間のように感じることが多かったので、それは全くなかったの
でとてもいいと思います。
夜の公園  川上 弘美
夜の公園
夜の公園
川上 弘美
川上弘美の新作です。今回は古道具中野商店などに比べて、抽象度
が高くやや難解な小説ですね。

川上弘美の場合、タイトルに固有名詞が使われていると露骨なくらいに
ハードルが低い小説になっているような・・・

「ニシノユキヒコの恋と冒険」も「古道具中野商店」も「センセイの
鞄」の「センセイ」だって固有名詞と同じでしょ。

それはともかく、「夜の公園」

いきなり「夜の公園」で顔も見えないのにべたべたしている周りの人間
たちに毒ずく主人公リリ。

そうなんですね。今回は純文学モードですから、夜の公園はメタファー
なんですね。夜の公園というのは、どこまで続いているのか分からない
主人公の世界観そのもので、世の中とは「顔が見えなくてどこの誰なの
かはさっぱり分からないし、何をしているのかも分からないけれども
なんだか恋愛でいちゃいちゃしていて、自分ばっかりが一人で不満
を持っていて不幸のような気がする」そんな世界のメタファーなん
ですね!どですか?タイトルをこれにして、冒頭のシーンをこんな
シーンからにしたのは弘美流の直球勝負なのですね!?アイガッタイ
ット!!!

そんななんか嫌味っぽいこと言うのはこの辺にしておいて。内容です。

結局やはり主人公はリリで他の登場人物は主役級の扱いを受けている
けれども、「リリを不満をかかえながらも、今の生活をエンジョイする
方向に向かわせる役割」を担っているのだと思います。

相変わらず登場人物たちの体温がひくーい!!早めに読み進めていく
と違うはずの登場人物のどれが誰だかさっぱり分からなくなります!
注意!

特に離婚を決意する旦那と女房でさえも同じような印象を受けてしまい
ます。でも、いいんです。そこが弘美流。低温で表現される人それぞれ
が同じようで違う悩みをかかえているのですから!!

そんな中でも印象的というか一番派手なのが春海でしょう。
登校拒否児童に対して、「自分がいいと思うまでそのままにしておく
のが一番いい」と思ってしまうところなど、この小説のスタンス
そのものです。

今回の「夜の公園」の肝となる考え方は「あきらめ切れるまでドタバタ
やれば、まぁこれでいいかというくらいに現状に満足できるだろう」
という感じでしょう。

とりあえず自分は読んで楽しかったですよ♪
青山娼館  小池 真理子
青山娼館
青山娼館
小池 真理子
小池真理子、新作。
青山娼館というからには、すごくゴージャスでお耽美な館での
女たちのプライドがぶつかる退廃。そんな「吉原炎上」的な物語になる
かと想像したら、決してそんなことは、なかった。

小池真理子にありがちな大人の恋愛と昔の痛みから抜け出していく小説
でした。

しかし、小池真理子って、セリフとセリフのあいだに、すごく相手の表情
の説明を挿入する人ですね。○×な表情で見つめた。とかそういう言葉
が妙に多くて、気になりました。
みなさん、人の表情をすごくしっかり見ておられるのですね。
おやすみ、こわい夢を見ないように 角田光代
おやすみ、こわい夢を見ないように
おやすみ、こわい夢を見ないように
角田 光代

角田光代、新作短編集。
しかし、最近の角田光代はなんかファンシーすぎて少し気恥ずかしい
タイトルが多いですね。
ぴっとは出てきませんが、もう一冊の新作もかなり気恥ずかしいタイト
ルでした。

それはともかく。直木賞受賞作の「対岸の彼女」の印象しかない
人には、かなり違う印象を与えるであろう作品に仕上がっておりました。
かなり純文学のほうにベクトルが向いております。

どの話しもやや異常な精神状況をモチーフとした、人間関係の
閉塞を描いているものです。もちろん、その状況が結論を迎えないまま
なのですが、今回、この作品集で感じた違和感(悪い意味ではない)
みたいなものは、なんかタイトルと本編のあいだの関連が(これは自分の感じ方なのかもしれませんが)しっくりこないイメージがあるのです。

「そらをまわる観覧車」とか「このバスはどこへ」とかすごくおしゃれで
かっこいいタイトルです。けれども、最後まで読んでいても
「このタイトルじゃなくてもよかったんじゃないかなぁ」という印象
が拭いきれない気がするのはどうして?

でも、自分はその腑に落ちない感覚がすごく好きなんですけどね(^^)
まとめてみると最後までその浮遊感のような違和感のような
足りない感じが心地よかったです。
新参教師  熊谷 達也
新参教師
新参教師
熊谷 達也
面白かったです。
熊谷達也はダイナミックな雰囲気が持ち味だと思うので、
ややもの足りないかなとも思ったのですが、それでもよかったです。

学校の中の話なのに、生徒にはほとんどフォーカスを当てないで、
学校内部や先生のあいだのちまちました話題を綴っていく書き方。

特に目立って新鮮ですごく面白いわけではないのですが、
「あぁ。どこにいっても苦労はあるんだよね」的なしみじみサラリーマン
味わいは奥田英郎系でしっくりきますね。

アンボス・ムンドス 桐野 夏生
アンボス・ムンドス
アンボス・ムンドス
桐野 夏生
素敵です。桐野夏生。冴え渡っています!
なんともこんなに意地が悪い短編集をよくも書ききれたものです。
いやはや、よい意味で。

すべての話しの根っことなっているのは「無意識のうちの悪意」だと感じたのですが、じわじわと進んでいくストーリー、お互いの足を引っ張り合うような人間関係。

負の感情にがんじがらめにされているような均衡とそれを少しだけ壊したくなってしまうような衝動、そしてそれを行ったところで特にこれといったカタルシスを得られていないようなところ。

客観に客観を重ねたような乾いた文体で描写されるえげつなさも逆になおさらいやらしくてたまりません!

ストーリー展開の派手さはないですが、「OUT」での師匠の家での裕福ではない親子関係、「グロテスク」の学校での冷ややかさみたいな描写の様子を彷彿しました。
卵一個ぶんのお祝い。―東京日記  川上 弘美
卵一個ぶんのお祝い。―東京日記
卵一個ぶんのお祝い。―東京日記
川上 弘美
川上弘美のエッセイです。
相変わらずだいぶシュールでふわふわした持ち味がおいしい作家さんです。

なんか女性的とか純文学的とかそういう簡単な言葉では割り切れない、そういうふにゃふにゃしているようで、そういう軟らかさを曲げないという点で一本強固に筋が通っている独特。

そして、今回読んでいてすごく気に入ったところは句読点の打ち方です。

「選びながら、帰る」みたいに動詞と動詞をつなぐ途中に句読点を打って、一拍置いてしまうこのテンポがすごく好きです。

確認もしていないし、記憶もあやふやですが、川上弘美は今までずっとこういう句読点を打って、文章を表現し続けてきた(はず)。

この打たなくてもいい、ワンテンポ・一呼吸のなかに、川上弘美のいわゆる「独特」が凝縮されているのだろうなと思いました。

それは動作を強調したいとかそういう文章技法の目的ではなくて、ただ単に日常生活でこういう一呼吸の「間」みたいなものがふわっと生まれてしまいやすい感覚なのだろうな。そして、こういう「間」はこのような動作+動作のところで目立って現われてしまうのかなと思わせられてしまいました。
四月になれば彼女は 川上 健一
四月になれば彼女は
四月になれば彼女は
川上 健一
川上健一の新作はもろ「翼はいつまでも」路線。青臭い青春ブラボー路線の作品でした。
それも、なお、短い時間の中で矢継ぎ早に出来事があれやこれやと起こるこじゃれた展開です。
「駆け落ち」だとか「相撲部屋にスカウト」、「バーで女を買う」、なんか素っ頓狂なありえないようなことがごわごわごわと連続で起きて、それでいて、妙にしっくりきている、この不思議な感覚はナイスですね!

最後が「翼〜」みたいに淡い恋心で終わらせているのもマルですね!!!